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RFID タグは金属の工具や設備で読めるのか

RFIDAsset trackingEPC Gen2On-metal tags
鋼面を背景に白いカードへ載せた金属対応 RFID タグ三種。エンジニアリングプラスチックの硬質タグ、小型セラミックタグ二個、金属対応ラベルのロール

金属対応のタグを選んでいれば、金属面でも RFID タグはきちんと読めます。逆に、普通のラベルタグを鋼板にそのまま貼ると、まったく読めなくなることが珍しくありません。分かれ目はアンテナの物理であって、タグの値段でもリーダーの性能でもありません。

ただし、先にお断りしておく例外が一つあります。小型の鋼製手工具への一点ずつのタグ付けは、パッシブ UHF にとってほぼ打つ手のない領域で、調整でどうにかなるものではありません。これは後の節で扱います。本文で扱うのは、金属でも解決できる広い領域、つまり計測器、ケース、機械、金型、キャビネット、ラック、大型の設備です。

もう一つ。RFID は金属を透過しません。鋼の筐体に密閉したタグは応答しないので、資産がキャビネットの中にあっても、タグは扉の外側に貼ります。

金属はアンテナの一部になる

パッシブ UHF タグの正体は、中央にチップを載せた印刷アンテナです。電池はありません。アンテナには長さがあり、その長さはリーダーの帯域、EPC Gen2 なら国により 840 から 960 MHz に合わせて同調してあります。リーダーの電界がチップを起こし、チップは変調した信号を反射して返す。この往復のすべてを、アンテナが拾えたわずかなエネルギーだけで賄っています。

そしてアンテナの範囲は、アンテナ自身の輪郭では終わりません。数ミリ以内に近づいたものはみな回路の一部に取り込まれ、その中で導体はいちばん強引な相手です。普通のラベルタグを鋼板に押し付けた瞬間、手元にあるのは、もう買ったときのタグではありません。

別々の故障が、同じ名前で呼ばれている

「金属で RFID が死ぬ」と一口に言いますが、その下には挙動のまったく違う二つの故障が隠れています。この二つを切り分ければ、診断は半分終わりです。

離調(デチューニング)はタグ側で起きます。アンテナの真後ろの導体が共振点を押しのけ、エネルギーを拾う効率も落とします。タグは壊れていません。ただ、リーダーが聞いていない周波数を守っているだけです。症状は明快です。机の上では読めるのに、資産に貼った途端、距離を詰めても向きを変えても、二度と読めません。

反射は部屋側で起きます。鋼製ラック、棚板、キャビネット、隣の機械、下敷きの工具。これらがリーダーの電界を跳ね返し、反射波が強め合う場所と打ち消し合う場所が近接して生まれます。同じ棚の中で少し動かす、向きを変える、それだけで読めたり読めなかったりします。症状はむらです。通路からは読めるのに出口では読めない。立てれば読めるのに寝かせるとだめ。引き出しを開ければ読めるのに閉めると消える。

離調はタグを替える問題、反射は位置と向きと手順の問題です。この取り違えで最初の一か月を潰す現場は珍しくありません。

症状考えられる原因まず試すこと
取り付けると読めない、外すと読める貼り付け面による離調出力を上げず、金属対応タグに変える
向きによって読めたり読めなかったり反射とタグの向きタグを縁に寄せる、向きを変える
単体では読めるが、積むと消える隣接するタグと面開いた形で置き直す、または容器に貼る
数週間は問題なく、そのあと止まった損傷、塗装、溶剤、熱電波を疑う前にタグ自体を見る

スペーサーの正体と、金属対応タグの正体

アンテナを導体から少し浮かせると、両者の結合が変わります。だから数ミリの隙間で挙動は一変します。これは事実で、読めなくなったラベルの下にウレタン片を挟むと生き返ることがあるのは、この理屈です。

ただ、これは診断であって対策ではありません。ウレタンで生き返ったなら、原因は離調だったと確定できます。それでも、再現できる貼り付け工程は手に入っていません。効く厚みはそのタグの設計と、その物体の形に依存し、万能の厚み規則というものは存在しないからです。道は二つ。自社の資産で実測するか、この問題を最初から解いてあるタグを買うかです。

その解いてあるタグが、金属対応タグです。英語ではオンメタル、メタルマウントと呼ばれます。使い物になるものは、ライナーを厚くしただけのラベルではありません。背後に導体面がある前提で設計されたアンテナで、隙間は構造に作り込まれ、同調もその前提で取ってあります。導体の裏面は必ずしも敵ではなく、よくできた金属対応タグはむしろそれを利用します。空気中に置くと普通のラベルに負ける金属対応タグがあるのは、そのためです。

良い金属対応タグの中で働いているのは、空気の層だけではありません。多くはフェライトなどの電波吸収材がアンテナと金属の間に入り、放っておけば鋼面の表面電流に化けるエネルギーを引き受けます。薄い金属対応タグが、分厚いウレタンを敷いたラベルに勝つことがあるのは、この層の仕事です。仕組みまで知りたい方には、当社の金属対応タグと電波吸収材という記事があります。

鋼面での断面比較。普通のラベルはアンテナが鋼に密着して離調し、金属対応タグは隙間とフェライトの電波吸収層を構造に作り込んでいる

タグの選び方と、固定のしかた

この二つはたいてい同時に決まり、しかも互いに絡みます。

形状選びは、寸法と耐久と読取距離の取引です。薄い金属対応ラベルはどこにでも入り、普通のラベルと同じように印字でき、そのかわり手荒な扱いに最も弱い。金属対応の硬質タグは現場で生き残り、読みも概して良くなります。筐体の中に、まともなアンテナと設計された隙間を収める余地があるからです。そのぶん高く、取り付け場所も要ります。筐体の材質が残り半分の判断で、一般の現場ならエンジニアリングプラスチックや ABS、小さく硬くならセラミックや PCB、熱や屈曲が相手なら PEEK や TPU です。配管、ハンドル、フレーム、ラック支柱のような平面のない場所には、ねじ止め式や結束バンド式があります。

固定方法は小さな話ではありません。 固定方法が隙間を決め、隙間は同調の一部だからです。粘着は、清浄で乾いた面なら十分に働きます。剥がれるのは決まって、油の乗った面、冷えた面、塗装面、加工したての鋼面です。まず脱脂すること。それでも何枚かは失う前提で数えておくことです。リベットとねじは穴かブラケットが要りますが、来年もそこに残っています。結束バンドは動きます。配管なら許せますが、決まった位置から読みたいものには向きません。そして、あとから固定方法を変えたら読取は測り直しです。最初に読めていたのは、その幾何配置あってのことでした。

小型の鋼製手工具

この周波数帯で効率を出すには、アンテナに物理的な長さが要ります。小型の金属対応タグも存在しますが、小ささの代金は距離で払います。小さいほど近づく必要があり、最小クラスは至近距離専用です。そのうえでスパナ、ドリル刃、ソケット、ヤスリを思い浮かべてください。全面が導体、全面が小さく、大半が曲面。しかも引き出しに放り込まれ、数十本の同類と一緒になって電界に同じ悪さをします。

これは調整で抜けられる題ではありません。残っているのは、腹を決めて選ぶ選択肢です。ケースやキット単位で貼る。引き出しや保管位置に貼って中身をセットで管理する。この一群だけ別の技術にする。あるいは、一点管理の対象から外すと決める。どれを選んでも筋は通ります。小さいタグを五千枚買って運を天に任せるのは、筋が通りません。

液体も同じ話

水はこの帯域では損失の大きい誘電体です。エネルギーを吸収し、同時にタグのアンテナに負荷をかけて同調点をずらします。同じタグでも、満杯の容器と空の容器では別物の挙動になります。ドラム、ペール缶、クーラント容器のように中身が変わるものは、満たして一度、空にしてもう一度。試さなかった側の状態が、棚卸の当日に限って問題を起こします。落としどころは小型工具の節と同じ形になりがちです。容器一つひとつで物理と争わず、パレット、保管位置、カゴ台車に貼ることです。

貼る位置で勝負が決まる

自社の資産で答えを出す

実物での机上テストに代わるものはありません。費用もほとんどかかりません。

  1. その資産そのもので試す。 似た品ではだめです。鋼板の厚み、曲率、塗装、中身。全部が効きます。
  2. 最悪の条件で試す。 閉じた鋼製引き出しのいちばん奥の計測器。積み上げた真ん中のケース。ラック支柱に平たく当たった工具。
  3. 巻尺で距離を刻む。 リーダーは固定し、資産を少しずつ遠ざけ、読めなくなった位置を記録します。その数字はその部屋とその日のものです。候補同士の順位付けには使えますが、読取距離としては使えません。
  4. 複数個体、複数設計で試す。 カタログ上は同じに見える二つのタグが、実際の面では別の挙動をします。当たりの一枚では何も証明できません。
  5. 量産と同じ固定方法で付け直して、もう一度。 同じ粘着材、同じブラケットで 3 をやり直します。緩く置いて試し、本番では別の方法で付けたなら、それは未試験です。
  6. 発注はそのあとで。 サンプルは安いものです。選定を誤ったまま五千枚買うと、授業料は跳ね上がります。

TRAKON ではどう見えるか

TRAKON は物理を変えられません。変えられるのは、タグ選定の失敗にどれだけ早く気づけるか、気づいた時点でいくら使ってしまっているか、です。

テストには、実際に使うリーダーを使ってください。棚卸を AZH-P1 ハンディリーダーでやるなら、候補タグの順位付けもそのハンディで、自社の資産で、現場の実距離で行います。プロジェクトの本丸が出口なら、最終テストはその出口そのものです。金属ケースが歩く速さで通過するとき、Guard Basic のチェックポイントに与えられる読み取りの窓は一瞬しかありません。机の上でしか通っていないタグは、この関門を通ったことになりません。

稼働後は、棚卸データが見張り役になります。Count Basic はスポットチェックのすべての EPC を確認済み・欠品・想定外に分類します。金属対応タグの選定ミスには分かりやすい特徴があります。毎回同じ数点だけが欠品し、現物は棚に見えていて、しかも全部が鋼製。このパターンを見たら、紛失を疑う前にタグを疑ってください。そのスポットチェックを範囲決めから突き合わせまでどう回すかは、別の記事で説明しています。

タグをソフトウェアやリーダーと分けて見積もっているのは、適切なタグが貼る面で決まり、その面がお客様の資産の上にあるからです。何に貼るのか、普段どこに収まっているのかを教えていただければ、品番を一つ挙げるよりずっと確かな答えになります。

短い版

金属は RFID を単に遮断するのではありません。タグを離調させ、電界の形も変えます。導体面向けに設計されたタグを選ぶ。縁に貼り、毎回同じ方法で固定する。発注の前に、自社の資産で最悪条件を試す。そして、小型の鋼製品の一群については、一点ずつではなくケースと保管位置で追うほうが確実だと認める。最後の一つを飛ばす案件がいちばん多く、一年後にその棚卸データが信じられているかどうかは、そこで決まります。

そもそも電波という選択が正しいのかを検討中なら、RFID とバーコード、資産追跡で本当に変わること が、スキャナーで狙う作業をやめると何が変わるのかを扱っています。

TRAKON は ACCUZ® Industries が開発し、サポートしています。

自社の資産で試す

TRAKON は EPC Gen2 UHF タグと ACCUZ® リーダーで動きます。ソフトウェアはハードウェアに付属で無料です。